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(2024年03月18日)
「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」記者会見
今年度が開館25周年に当たる横浜みなとみらいホールはアニバーサリーイヤーのラストを飾る事業として「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」を3月19日(火)より3月24日(日)にかけて開催する。音楽祭のオープニングの前日、3月18日に横浜みなとみらいホールにおいて音楽祭開幕記者会見と2024/25年に開催される同ホールの自主事業についての概要が発表が行われた。横浜みなとみらいホール館長の新井鴎子、同ホール・プロデュサー・反田恭平、同ホール事業企画グループ長の菊地健一が登壇した。

左から菊地健一(横浜みなとみらいホール事業企画グループ長)、反田恭平(同プロデューサー)、新井鴎子(同館長)
©藤本史昭
新井館長の挨拶の後、プロデューサーの反田が音楽祭の詳細を説明した。「今年がホールの開館25周年であることにちなんで25の公演を企画した」とのことで、その内容はソロ、室内楽、オーケストラなど多岐にわたる。
「ホールの魅力の発信、新しい企画への挑戦、次世代との交流により未来を拓くこと、音楽を通じてのインクルージョン(様々の人間を包括すること)の4つを大きな柱とする」として全体を構想したというだけあって、どの公演も出演者ふくめ新鮮で、反田曰く「学校の文化祭の雰囲気。新しい風が吹いてくるようなコンテンツ」となっている。
反田恭平と若いアーティストたちの魅力が全開

反田恭平 ©藤本史昭
25の公演どれも惹かれるものばかりだが、とくに話題を呼びそうなものを反田の発言(カッコ内)を引用しながら紹介しよう。
まずは「ジャパン・ナショナル・オーケストラ ロマン派協奏曲 前夜祭演奏会」(3/19)。
“前夜祭”とあるが、実質的にフェスティバルの開幕コンサート。反田恭平が結成した
若い世代のオーケストラ(周知の通り、会社組織である)と、反田と同じく2019年のショパン国際コンクールに出場しその後世界各地で活躍中のエリック・ルーと反田の佳き仲間でもあり、いまや多忙を極める人気の務川慧悟の新鋭ピアニスト二人をソロに迎えて、グリーグ(務川)とシューマン(ルー)の2大コンチェルトと「いずれはオペラ全曲に取り組みたい」と意欲を示すモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》序曲を組み合わせる。務川の音楽性について反田は「彼の音楽は詩や小説を読むようなドラマ性を感じさせる」と絶賛する。美しいコラボレーションが期待される。
また、反田自身が協奏曲のソロを弾く公演も用意されている。「反田恭平 ジャパン・ナショナル・オーケストラ 新曲演奏会」(3/23)がそれで、作曲家の池辺晋一郎(元・横浜みなとみらいホール館長)に「指揮者が弾き振りするためのピアノ協奏曲」を委嘱して生まれた「ピアノ協奏曲Ⅳ“草が語ったこと”」を世界初演する。或る詩をもとに書かれた作品で、単一楽章構成による12~3分の曲だという。テンポの感覚がグルーブ感をもたらして曲の最期は「グロテスクになる」そうなのでこれは大きな聴きものになること必至。反田恭平の現代作品の演奏というのも珍しい。カップリング曲はブラームスの交響曲第1番。「ブラームスは将来的には4曲すべて演奏したい」と意欲を燃やしている。
室内楽の醍醐味も味わう
「ベルリン・フィルの団員とのアンサンブルで室内楽の重要さを改めて感じた」という反田は室内楽にも力を注ぐ。「ブラームス 室内楽演奏会」(3/21)と題して「以前にコンチェルトで共演したミュンヘン・フィルのメンバーでもある青木尚佳(ヴァイオリン/同フィルのコンサートマスター)と三井静(チェロ)、そしてウィーンと日本を拠点とするピアニスト髙木竜馬とのアンサンブルが実現する。精鋭3人が披露するのはブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番、チェロ・ソナタ第2番、最後にピアノ三重奏曲第1番という或る意味ブラームスのエッセンスとも言える選曲となった。欧州で活動する若手アーティストたちの室内楽への“挑戦”。室内楽の大家ブラームスの世界を存分に味わえるとともに新世代の演奏家の音楽的レベルの高さをも実感できるはずだ。
あと、これも注目なのが「反田恭平のオルガン道場」(3/24)。反田が横浜みなとみらいホールの誇るパイプオルガン通称“ルーシー”の演奏に挑むという無謀な(?)企画。ホール・オルガニストである近藤岳の“マスタークラス”に反田も参加するという趣向。最後にバッハのあの名曲「トッカータとフーガBWV565」などを実演する(演奏の模様はステージ上部に設置されたスクリーンに映写される)。足鍵盤も使うだけでなく音色を決めるストップの複雑な操作もおこなうというからこれは興味津々。この日は他に10代のマスタークラス修了者たちの演奏も聴ける。
上記以外にも「徳永二男 無伴奏ヴァイオリン演奏会」(3/22)、「ミュージック・イン・ザ・ダーク」(3/20)や「中学生プロデューサー修了生企画“家族みんなで2525コンサート”」(3/24)など、同ホールならではのコンサートが目白押し。できれば全日聴いてみたいものだ。反田は「今後はホールだけでなく街じゅうを音楽で溢れるようにしたい」そして「将来音楽家を目指す若い人たちに向けたマスタークラスも開きたい」と会見の場で語った。
音楽祭の概要説明の後に、菊地企画グループ長より、2024/25シーズンの主催公演について概要紹介があり、今年の12月にはパーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルや、
同ホールでは初となるエフゲニー・キーシンのピアノ・リサイタルが含まれることが発表された。
横浜みなとみらいホール
横浜みなとみらいホール|ときめく音楽を 海の見えるホールから (yokohama-minatomiraihall.jp)